上野耕平さん&児玉隼人さん インタビュー「上野耕平 × 児玉隼人 with 玉名女子高等学校吹奏楽部 スペシャルコンサート」

注目の若手管楽器プレイヤーと玉名女子高等学校吹奏楽部とのスペシャルコンサート。コンサートに先がけて、事前リハーサルのためにサクソフォン奏者の上野耕平さんとトランペット奏者の児玉隼人さんが熊本入りされました。共演された感想やコンサートへの想いなどをうかがいました。


――お二人は、PANDA Wind Orchestra(上野さんがコンサートマスターを務める吹奏楽団)での共演をはじめ今回が3回目とのことですが、お互いの印象は?

上野耕平さん:トランペットでここまでの音楽を演奏する、ただうまいだけではなく、そこに歌心がある演奏ができる凄い子が出てきたな!しかもすごく若い!と思って驚きました。

児玉隼人さん:楽器を始めた時から、管楽器で他の楽器と肩を並べて、しかもサクソフォンという楽器で第一線でやられているのをずっと知っていたので、同じ管楽器奏者として憧れの存在です。こんな風に何度も共演できることはうれしいことだと思っています。だけどずっとふざけているので、そんなことを忘れるくらい(笑)。考えてみると凄い方だなーと(笑)
また、ソリストとして自分で曲を残していくのは使命だと思っていて、僕もこれからやりたいなと思っていることをすでにたくさんやられていて凄いなと思います。新作の初演何回やりました?

上野:もう数えきれない!

――児玉さんは現在ドイツのカールスルーエ音楽大学のプレカレッジでラインホルト・フリードリヒ先生に師事されているとのことですが

児玉:中学校を卒業して今年4月にドイツに行きプレカレッジに入っています。レッスンを選んで受けるタイプの学校です。だんだんドイツの生活にも慣れてきて、日本に帰りたくないなーと思うくらい楽しくて、あっという間に過ぎています。先生のお宅に住んでいるのですが、先生も演奏活動をされていてお忙しい方で、直近の1ヶ月半ほどの間には3日くらいしか一緒の期間に滞在していなかったんです。広い家に僕が1人で住んでいました(笑)。
海外でもっと演奏をしたいと思っています。ヨーロッパでのコンサートは同じ曲をやっても全然違って、お客様も違うし空気も違うし、日本で演奏するのとは得られるものも違うので、日本と同じくらい海外での活動も大切にしていきたいと思っています。また、現代やバロックの音楽ももっと学びたいと思っています。急がずに、良い先生がいるうちにしっかり学びたいと思っています。学んだものを聴いていただく機会があるのはうれしいので、演奏活動もこのまま継続しながら、今は本当に勉強をしたいなと思います。

――上野さんは、今回演奏と指揮もされますね

上野:はっきり指揮をしようと思ったのは23歳くらいからでしょうか。僕がやっているサクソフォンという楽器は(歴史的には新しい楽器なので)クラシック音楽など、オリジナルで関われない作曲家が多いんですよ。だからその作品に触れたいと思ったことや、人生一度きりしかないしチャレンジしたいなと思って。
演奏についても、年を重ねることでだんだんこの楽器のことが解ってきた気もします。楽器の鳴らし方も、昔は筋力でねじ伏せていたんだなというのが自分なりに見つかってきました。また、サクソフォンは普通に吹くと華やかな音色が出るのですが、これがクラシックで吹くと音色が合わないんですよ。だからそれをいかにそうじゃない鳴らし方をしていくか、引き出しを増やさないといけないので、その作業が今はすごく楽しいですね。

―― 今回のコンサートに向けての玉名女子高校吹奏楽部とのリハーサルはいかがでしたか?

児玉:最初に聴いた時、こんなに吹ける高校生がいるんだ!と思いました。上野さんが指揮をされている時に、上野さんの言葉を受けてそれを吸収して表現出来ていてレベルが高いなと思いました。強豪校だと硬いイメージがあるのですが、終始和やかでいいですね。

上野:音楽力がある子たちだなと感じました。リハーサルの最後に僕の指揮でR.シュトラウスの「万霊節」を打ち合わせなしで一回通したのですが、即興的にテンポの揺らぎなどもやったわけですが、ちゃんと反応して音楽に出来るということは本物だと思いましたし、もっと出来ると思いました。まだまだ出来ることがたくさんあると思ったので、前日リハで長めに時間を取ってさらに良いものをつくろうと思っています。

――上野さんが指揮をされる「たなばた」と「万霊節」は上野さん選曲とのこと。選曲の理由を教えてください

上野:「たなばた」は、酒井格(いたる)さんが高校生の時に書かれた作品です。音楽は、その時にしかできない音楽があると思うので、高校生の今の感覚で演奏してほしいと思って選曲しました。
「万霊節」はなかなか渋い曲で派手さがないので、このようなコンサートで演奏されることが少ない曲です。言葉にするのは難しいのですが、ただ上手に吹くことだったり派手にきらびやかに吹くことだけではなく、不思議な力を音に宿すと言いますか、そこが音楽ってやってておもしろいところなんですよね。楽譜に書いてある音符をしっかり演奏することも凄いし、彼女たちにとっては当たり前に出来てしまっていると思うのですが、さらにその先へ。一生音楽から離れられなくなる魅力というのは実はその先にあるんですよね。せっかくご一緒するんだったら、ちょっと違うアプローチでこんな曲どうですかという思いでこの作品を選びました。吹奏楽だけやっていると出会えない音楽の奥深さやおもしろさを知ってほしいと思ってこのような選曲にしました。

―― 話題は上野さんが考える音楽・吹奏楽の楽しみ方について…

上野:全国の吹奏楽部の子たちと関わってきて、音楽と縁を切ってしまう子たちが多いなと思ったんですね。幸い自分は、小学校の時に吹奏楽をやっていて本物の音楽のおもしろさに繋げてくれたので続けられました。
昨今の吹奏楽界を見ていると、〇〇大会金賞とか、音が合っているというようなことばかりがクローズアップされすぎている気がします。その音楽の歯車の一部になっているだけだと、果たして彼ら彼女たちは奥深さに気付けるのだろうか、とすごく疑問を感じています。と同時に、学校の吹奏楽部の定期演奏会のゲストで来てくださいというお話しをいただくこともあって、以前は何度か出演していたのですが、大抵前日にリハして本番で「よかったね」で終わるんですよ。これは全く意味がないなと僕は思っちゃって。
やっぱり今回のように事前に来てリハーサルをご一緒して、音楽を一緒につくりながら音楽の楽しみ方を共有しながらステージを一緒に迎えることが、やらなければいけないことだと思っています。今回は、事前に呼んでいただいてとてもありがたかったです。この時間こそが大事だし、この面白さに気づいてしまったら、楽器を吹く吹かないにかかわらず音楽を深めていくことを知ることができると思います。
燃え尽き症候群と言いますが、音楽は3年から6年くらいで燃え尽きるものではないんですよ。一生かかっても全てを楽しみきれないっていう分野。そこにみんなに気付いてほしい、その沼にハマってほしい。そういう想いでやってます。

――上野さんを沼にハマらせたのは?

上野:小学校の顧問の先生です。小学生にしてはものすごく厳しい練習を重ね、小学生とは思えないような演奏レベルでそれこそコンクールで金賞とかを取るところだったんです。ただ、金賞を取るためにがんじがらめにするのとは違うやり方だったんですよね。先生が、ちゃんと「美しいってどういうことだろう」とか、わかりやすく紐解いて子どもたちに教えてくれて、「そのためにはこういう練習をしなきゃいけないわよね」という方だったんですよ。なおかつ一流のプロの人たちの演奏を紹介してくれました。大半の子どもたちは自分たちだけでは良いものに辿り着けないですよね。だから周りの大人が良いものに出会わせることが必要だと思います。吹奏楽界がコンクールだけで語られてしまうことに僕はずっと疑問を持っていて、すごく悲しいことだなと思っています。彼ら彼女らの人生が豊かになるために音楽をやってほしい、それが全てだなと思っています。

――上野さんのコンクールに対しての想い

上野:審査員をした経験もあるんですけど、残念ながらコンクールって、心に刺さる忘れられない演奏が金賞になるとは限らないんです。音楽を点数にするってそもそも無理なことをやっている。その前提でコンクールを捉えて欲しくて、やっている子たちもそうだし、周りの大人たちも。金賞だからすごい、でも銀賞も銅賞もすごい。だからやっている子たちにはコンクールの成績だけで、「自分たちはダメだったんだ」と絶対に思って欲しくないんですね。だって、今でも覚えてます。自分が審査した時の銀賞の13位の高校の演奏を。それって賞にはならないけど凄みを持っているんですよ。それって点数にはならない、賞にはなりにくい、そういう歌心であったり、多少音は並ばないかもしれないけど何か伝えようというところであったり、音に対する思いであったりそういうものと向き合ってお客様に届けようとした方が音楽の本当の魅力には近づけるということは、自分の経験を通して確信をしているので。ただうまくさせるだけだったら、1日だけでもテクニックを教えてこうやっておけばうまく聴こえるよということは出来るかもしれないのですが、音楽を一緒につくる過程で、同じステージに立つまでの過程で音楽を育むということが、これこそが僕が伝えたいことであり、最も知ってほしい音楽の魅力の部分でもあります。

――今回のコンサートの聴きどころを教えてください

児玉:僕たちの音を初めて聴く方も多いと思うので、第1部は自己紹介のような気持ちで演奏します。上野さんとのデュオもとても楽しみです。

上野:それぞれ一推しの曲をもってきているので、あの広いホールでどのように響くか、その辺りも楽しんでいただければ。

児玉:上野さんの指揮で演奏するのは2回目なんですが、みなさんの演奏も本番は変わると思うのですが、上野さんの指揮は練習と本番は何もかもが違うので(笑)もちろんされて嫌なこと、変なことはしないんですよ(笑)本番にしか出ないものがあって。

上野:音楽って生ものだというのを、指揮台に立つとより感じるから。また、本番前日のリハーサルで彼女たちのポテンシャルをどこまで一緒に上げられるか、どこまで見たことがない景色が見られるか。また本番の時にどういう反応をするのかなとか、本当に音楽は生ものなので。ものすごく音楽力がある子たちなので、それをもっともっと解放できたらと思っています。もっと価値観を柔軟に、奏法も柔軟に、もっといろんな音が出るはずです。

――最後に一言

児玉:吹奏楽は何よりもキラキラしているのがいいなと思っていて、より若い人たちだからこその魅力がすごいと思うので、ぜひ聴きにきてください!

上野:この日は確実に良い音楽が聴けます!彼女たちの一人一人の音楽もきっと感じていただけるだろうし、この日ならではの組み合わせで、この日だからこそ、この曲目で、このお客様で、このホールで、というきっといろんな景色が見られると思います。

玉名女子高等学校吹奏楽部とのリハーサルの様子。第2部の2曲は上野耕平さんの指揮、児玉隼人さんは1stトランペットとして演奏されます

〈編集後記〉
12/1に玉名女子高等学校で行われた事前リハーサルも見学させていただきました。
スパークの「カーニバル」は上野さんのサクソフォンソロとともにとにかく楽しく盛り上がり、同じくスパークの「マンハッタン」は児玉さんの歌心あふれる演奏から超絶テクニックまで思う存分味わえる曲。上野さんが指揮をされる「たなばた」と「万霊節」では、児玉さんはトランペットパートで参加。
リハの途中、「たなばた」のトランペットソロのあまりの美しさに吹奏楽部のみなさんも思わず後ろを振り向いてしまうという一幕も(笑)。上野さんもおっしゃってましたが、打ち合わせなしで1回だけ通された「万霊節」。後半、涙が出そうなほどに感動的な瞬間がありました。前日リハ、そして本番までの間にさらにどのような化学反応が起きるのか、本当に楽しみで仕方ありません。 吹奏楽がお好きな方はもちろん、なかなか管楽器の演奏に触れる機会がなかった方も、今年の締めくくりに若さ溢れる素晴らしい音楽をお楽しみください。(み)


上野耕平 × 児玉隼人 with 玉名女子高等学校吹奏楽部 スペシャルコンサート
■2025年12月27日(土)13:30開演
■熊本県立劇場コンサートホール
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